前編では、まさに「医療と介護の具体的な連携法」について語り合っていただきました。
今回の後編では、さらにこの地域連携の問題を掘り下げ、
2006年4月の改正介護保険法施行以降への「期待」と想定されうる「問題点」について、
介護の専門家であり識者である、みなさんのご意見を伺いました。
1.インターネットを利用した上手な連携の例
菅 この新春座談会の前編では、「まず事前に顔を合わせておく」ことの重要性について、みなさん実感していらっしゃるということでした。ただ、毎月確実にケアカンファレンスを行い、関係者全員が顔を合わせるというのは難しい場合もあります。ですから、コンピュータのインターネットを使ったネットワークを用いてカンファレンスを成立させる、という試みに対しては、大きな可能性を感じます。みなさんはいかがでしょうか。
土橋セキュリティの問題は大きいので、それをクリアしていることが必須です。現在、メールでのやりとりは日常的に行われているので、インターネットの利用も、ひとつの方法として評価できるでしょう。例えば、デジタルカメラで撮った褥瘡(じょくそう)や疾患の写真を手軽に送ることができ、自分の時間に合わせてチェックし、現場の都合に応じて活用の範囲を広げることも可能です。こうしたインターネットの利用については、研究を進めても良いと思っています。
菅ただし、問題点としては、セキュリティの面だけでなく、地域全体で同じシステムを使わねばならないという連携上の難しさもあるのでは。
システムがツールとして十分に役立つことが絶対条件
苛原電子ネットワーク事業について、さまざまな医師会で試みがなされ中断されている例もあると聞いていますが、松戸市医師会では5年ほど継続しています。ただし、システムがツールとして十分に役立つことが絶対条件であるにもかかわらず、現状では、その点がいまひとつ達成されていません。一方、ネットワークを用いた担当者会議については、スムーズに行われています。同じツールが地域に普及していくにつれて力になっていくでしょうから、私もインターネットを用いたネットワークの潜在能力は高いのではないかと考えています。
ただし、情報管理の安全性を追求しすぎると使いにくいものになりがちなので、非常にこなれたものをつくっていく必要があるのではないでしょうか。
菅今、介護施設関連の雑誌で連載しているのですが、介護を「科学的に考えていこう」「学問にまで高めよう」という企画で執筆しています。そこには、ネットワークを利用してのカンファレンスや地域ネットワークづくりに関するテーマも含まれています。
今後、グループホームにスタッフが散っていくのをはじめ、大きな施設のみならず、地域に機能が分散していく可能性が高いと実感しています。これは、医療、介護、双方の面だけでなく、さらに障害者福祉の分野では、施設をなくしてしまったほうが良いという「施設解体論」まで出ているのです。そうすると、なおさら、インターネットを用いる利点は多いのですが、情報面での「一律で対等な連携」が必要で、これに失敗すると本当にバラバラになってしまうのではないかと危惧しています。そのためのツールづくりは、積極的に進めてほしいのです。
インターネットのホームページを見るようなプラットホームからなるツールで、アクセスコードによって認証されれば使えるシステム。そして、患者さんやご利用者さん主体で、多業種の連携にも適うべく、一元化された情報を共有できるシステムづくりやパイプの組み立てが必要でしょう。さらに、医療の側での遠隔医療でのネットワークといった流れはありますが、介護業界でも大きな単位へとネットワークを広げるための試みをしていくべきではないでしょうか。
阿部以前、伊勢原でカナミックさんのASPのシステムを用いてモデル事業を試みたところ、ケアマネジャーもずいぶんインターネットに慣れて使いこなせるようになったという例があります。ただし、システムの利用は非常に有効で便利ですが、サービス事業者レベルでは十分に普及しているとは言いがたく、いまだに片手でキーボードの入力を行っているサービス担当者さんもいるのが現実です。メールの利用については徐々に浸透してきて、時と場所を選ばず、自由にやりとりができるようになってきています。
セキュリティについてはきりがない問題で、これについてはプロに管理してもらうのが一番だと思います。あとは、地域ネットワークに向けて、どのように保険者が音頭をとってくれるかもポイントでしょうね。
土橋まあ、行政がすぐにそこまで動くことは期待できないので、難しく考えず、ツールを用いて必要な情報を気軽かつ効果的に交換できれば通常は問題ないでしょう。その他の重要な問題については面談する等、手段を使い分けていくべきです。
岡島私は、医師と組んで1名のご利用者さんを担当するという、東京都のモデル事業に参加しました。20組程度が参加し、これは成功したので期待を抱いていましたが、その後は継続されていないようです。その際、何かあればインターネットの掲示板を用いたり、顔を合わせたり等、必要に応じて手段を選択していました。
土橋メーリングリストなども便利ですね。とにかく面倒なものはだめで、簡単でなければいけません。掲示板は「見に行かなければならない」という点においては不便を感じます。
菅緊急な要件には、即時性のあるツールが必要ですし。
阿部むしろ緊急のときには、医師のもとに飛んでいくこともありますよね
また、介護保険の運営基準では、サービス担当者会議の目的は、「居宅サービス計画書について、専門的な見地からの意見を求めよ」とされています。これは、緊急である必要はなく、「先生、何かあったら言ってくださいね」というニュアンスのやりとりで済むので、ツールを便利に利用できるケースですよね。
土橋そして、例えば、「食欲が落ちている」「褥瘡ぎみである」ということをケアマネジャーから伝えられたら、医師は往診の際に、こうした箇所をじっくり診ておけばいいわけです。


