座談会

医療と介護の連携 前編 「病診連携」と「地域連携」

2.待たれる「病診連携」

確かに。突然電話が鳴って、態勢が整わないうちに、ご本人だけが地域に帰され、受け皿としての介護側がケアマネを中心として、突然の要望への対応に苦慮するということはありますよね。阿部先生は、こうした問題を、どのようにお考えでしょうか。この医療と介護の接点に対する問題提起など、ございましたら、お願いします。

阿部介護保険制度ができ、ケアマネジャーという職種が始まる前は、介護・福祉と医療とは分断されていましたよね。現在は6年前に比べれば、進歩していることは事実です。それは、ケアマネジャーという職種の誕生によってケアマネを名乗ることで、各専門職が何をしているのかがわかるようになったことも大きな要因です。

そして、ケアマネの動きも変わってきた。在院数が短くなり、かかりつけ医よりも先にケアマネに「明日の」退院の連絡が入る。そこで、今日の今日来て調整するように依頼されることから、医療機関、特に大病院に対して介護事業者が強引さを感じたり不信感をもったりなど多少のトラブルはありますが。ドクターの数も膨大で、月1回しかいらっしゃらない方もおられます。加算項目が得られそうな方向で議論も進んでいるので、少しはさまざまな問題が解消されていくのではないかという希望も抱いています。

ただし、連携よりも前にスピードが要求されてしまうのが現状で、ベッドの準備で精一杯、ということもあるのです。ややもすると病院との連携が難しいと感じているケアマネも…。こうした現状を打破するには、やはり話し合いができる仕組みをつくっていかなければならないと感じています。

岡島私は介護保険制度開始の平成12年から新宿でケアプランを立ててきました。新宿というのは、大きな病院や大学病院がたくさんあり、特別な土地柄だと言えるかもしれません。そのためか、医療と介護の連携はかなり進んでおり、点と点であった医療と福祉の関係が、線になり、面になって、継続的な流れができてきました。また、以前は風邪をひいても大病院を利用する方が多かったのですが、現在はホームドクターやクリニックの判断で大病院に移行して、またそこに連絡が入ってから在宅に戻って来るなど、そうした地域のかかりつけ医の判断での連携もできつつあります。

連携ができていると、病院に入っている時からのモニタリングも可能なので、予想よりも早い在宅への移行に関しても対応ができます。こうして、かなりの方に対して退院前のケアカンファレンスを行うようになってきています。そして、担当医師やナース、MSW(医療ソーシャルワーカー)、ご本人やご家族、ケアマネジャーが集まり、在宅復帰へのご希望や予定を話し合います。その際、サービス事業者を連れて行くこともあります。これをすると、安心して在宅に戻っていただけます。

介護保険制度施行以後、特に、ここ1~2年で連携はどんどん進んできましたね。新宿区ではケアマネの連絡会や訪問介護の会など、全サービスをつないだ協議会が設立され、医師会もアドバイザーとして入ってくださり、大きな連携の輪ができてきました。

「患者学」「病院の受診方法」が言われてきている一方、都市では、大病院志向が強い反面、何かの時には「地域に」と分断されて、ケアマネはアプローチに苦心しているという声もあります。地域とのコーディネートを手がけていらっしゃる土橋先生は、どうお考えでしょうか。

「病診連携」を進め、末期ではなく生活できる状態で在宅に移行

土橋氏

土橋ソーシャルワーカーとの連携は多いですよ。ただし、大病院では毎日多数の方が退院しているわけで、独居の方や*神経難病を患う方に対応することも多いのですが、すべての方のフォローを行えるという状況ではないのかなと思います。

そこで市川市では、厚生労働省の機能分化による「かかりつけ医の推進事業」として、先日、市内の三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)、また、訪問看護師や在宅介護支援センター、保健センター、保健所などの関係者を20名以上集めて、「病診連携」に力を入れていこうという話し合いをもったのです。

私も以前は、患者・家族・医師の3人程度の狭い関係性の中で、在宅医療を20年近く支えてきました。その当時は「暗黙の了解」で、さまざまなことがうまくいっていた部分もあったものですが、現在は多組織・多職種が関わっているということで、そこには格段の差があります。

また、在宅に関する連携も進みましたが、「病診連携」をもっと進めたいと思っています。例えば、この機会を逃すと退院できないという末期ではなく、生活できる状態で在宅に移行する、そこから私たちも関わっていかなければならない。そして、在宅医療について十分に理解してもらったうえで進めるのが重要ですが、患者さんの退院後の生活の支援までは、なかなか医師の手が回らないのが実情ではあり、そこをご理解いただきたいとは思っております。

やはり、大病院志向が存在していますが、地域の病院の利用法を伝え、生活・医療、両面からのサポートも必要ですよね。ところが、いきなり担当せねばならないという現実の流れの中で、いったい患者さんやご利用者さんに、どのように説明すればいいのかという問題もあります。

苛原大病院志向の原因はいろいろあると思いますが、医師自身にもあるような気はしますね。一部の開業医の勉強不足や対応の悪さ…。ただし、医療機関の役割というのは明確にあるので、どこを開業医がみていくのかという「線引き」を明確にしていかないと、医療費の無駄遣いにつながりかねないわけです。

患者さんにとってもメリットがなく、大病院で長時間待って診療時間は3分程度で、「ハイ、終わり」ということも多いものですからね。そのため、開業医の役割は事業を通じながら啓蒙していくしかなく、それを開業医側もしっかりと受け止めるように努力していくことが大切です。

先日も東京の病院に通えなくなった患者さんが紹介状1枚だけで私の元にやってきました。10年通っていた病院で、末期ガンで2週間通ったら、もうやることがないから出て行ってくれと言われたようです。そこで、ご利用者さんも将来を見越すことが必要かもしれません。

結局、本当に最期まで面倒をみてくれるのは、大病院なのか、地域のかかりつけ医か、それともほかの誰かなのか…。

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