座談会

医療と介護の連携 前編 「病診連携」と「地域連携」

急速に進む少子高齢化――。
2006年4月には改正介護保険法も施行、 地域医療、地域ケアへと加速されていきます。
そして、介護サービスにとって、医師の存在は不可欠なもの。
それが、「医療と介護の連携」なのです。

1.往診と訪問診療の違いとは?

菅氏

今回のこの新春座談会のテーマは「医療と介護の連携」ということで、時代に即したキーワードがあげられています。この、地域医療や地域ケアへと加速する中で、地域の中の患者さんやご利用者さんの話に集約されていくわけですが、そこに障害者福祉に関する事項も含まれ、今後、制度として一本化されていく方向です。

今後展開するであろう高齢者医療制度においても、こうした「医療と介護の連携」がクローズアップされていくことが予想されています。準備には遅いかもしれませんが、この座談会では、実際に、どのように動き、どのように連携していくのかというきっかけが見えてくればよいのではないかと思います。

お集まりの皆さんの専門性によって、そのあたりを教えていただき、地域の中における、医療機関や施設から在宅介護への移行のサポート・医療から介護への橋渡しの接点などについて、ご意見をお聞かせいただければと思っております。まず、モデルケースの分析や「地域に帰す/送り出す」というのを医療の側から実践していらっしゃる土橋先生に、問題点や具体的な内容、ビジョンについてお聞かせいただきたいのですが。

土橋そうですね。私は市川市の医師会会長として、つまり、市川という「面」の立場から在宅医療に取り組んでいますが、病院から在宅に移行する際には、在宅医療、地域の「かかりつけ医」による往診、「病診連携」が非常に重要になってきます。

最近になって「在宅医療」*「訪問診療」という言葉が使われるようになりましたが、医師による*往診というのは以前からありました。その際、病院の医師にとっては患者さんの「生活」が見えづらく、具体的なイメージがわかない部分が多いため、病院の医師と地域の「かかりつけ医」との連携は大切です。

また、在宅に移行する時期が重要で、「緩和ケア」「ターミナルケア」などのケースで戻られる方もいらっしゃいますが、本当に末期になってから戻られる方も多く、訪問診療を行う医師・看護師・ヘルパーの十分な関係性が構築されないままにターミナルを迎えてしまうこともあります。そこで、入院・通院している早い時期から連携をもち、訪問看護師、ケアマネやヘルパーも早い時期から関係をもっておけば、気心知れた状態で比較的速やかに在宅に移行できるのではないかと考えております。

今のお話に「生活」というキーワードがありましたが、これは、私たち歯科の領域でも最近、「生活をみる」「生活を知る」「生活に入る」などと言われるようになってきましたが、ここで病院という機能の弱点が見えてきます。患者さんを「生活に帰す」という点に着目すると、苛原先生は、医療と介護の双方を手がける中で、両者の接点を哲学的に、どのようにお考えか、ぜひ教えてください。

在宅医療というのは介護・生活を支えるべき

苛原氏

苛原私は千葉県松戸市で有床診療所をしております。当初、無床診療所として手がけていましたが、10年前に在宅医療をはじめました。その中でわかってきたことは、慢性疾患に対する医療というのは生活のうえに成り立つもの、生活が成り立たなければ在宅医療そのものも成り立たない。生活が成り立たずに施設や病院に戻って来る例をたくさん見てきました。

つまり、在宅医療というのは介護・生活を支えるべきであるというのが、私の持論です。こうして少子高齢化で生活が立ち行かなくなる方の問題を解決したいという願いをもちましたが、有床診療所のみではダメで、医療も介護も提供していくべく、有料老人ホームやグループホーム、その類似施設も診療所の隣から地域へと広げていきました。ただし、いまだ医療と介護の連携は十分にとれているとは言えず、むしろ地域の事業所間の連携のほうがうまくいっている部分もあるのではないかと思います。

特に、松戸市では、改まっての連絡もなく、常に体制が整わないうちに紹介状一通で都内から在宅に移行されたりするので、対応には苦労しています。

コラム「往診と訪問診療の違いについて」

医療の分野において、患者さんのもつ「通院条件」を加味することは、診療の本質的な方針の一つになります。とくに短期的に通院困難なのか、長期的に通院困難なのか、という条件の違いは診療方針に大きく影響します。例えば、風邪をひいて動けない、といった場合は短期的な対応、すなわち「往診」が適用されますし、脳梗塞の後遺症で動けない、といった長期的な(おおむね6ヶ月以上の)ビジョンが必要な場合は訪問診療という方針を立案しなければなりません。
また、医科では制度的に分けて考えられていますが、歯科では十分に分離されていないといった現実もあります。

(解説:菅 武雄)

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