瀬戸 恒彦 さん インタビュー ケアマネジメント -情報共有のあり方- (2004/8/25)
- ケアマネジメントに課せられた今後の課題
- 情報共有化の課題と展望
- 介護予防事業の今後の展望と介護事業経営への影響
瀬戸 恒彦 さん プロフィール
社団法人かながわ福祉サービス振興会 専務理事
1979年神奈川県庁入庁。
1993年自治大学校修了とともに、福祉部福祉政策課で高齢社会対策に関する各種調査、介護保険制度の立ち上げに従事。2001年(社)かながわ福祉サービス振興会に移籍、事務局長に就任。 2002年から専務理事。全国介護支援専門員連絡協議会事務局長。神奈川大学非常勤講師も務める。
共著として、『介護保険と福祉ビジネス』中央法規出版2000、『改定・居宅介護支援給付管理業務マニュアル』中央法規出版2003、『評価が変える介護サービス』法研2003、などがある。
1.ケアマネジメントに課せられた今後の課題
(1)介護保険制度見直しの動向
7月30日に開催された第16回社会保障審議会介護保険部会において、介護保険制度の見直しに関する意見が取りまとめられ、介護保険制度見直しの基本的な考え方と具体的内容が明らかとなった。
見直しの論点として重要なポイントは、(1)介護サービスの「量」から「質」への転換、(2)在宅ケアを推進するための在宅支援の強化、(3)地方分権の推進の3点である。さらに、新たな課題への対応として、(1)介護予防の推進、(2)痴呆ケアの推進、(3)地域ケアの展開が重要となることを指摘している。
具体的な内容としては、給付の効率化・重点化を図る中で、総合的な介護予防システムの確立が必要であることと、サービスの質の確保・向上を図る観点からケアマネジメントの体系的な見直しが必要であることがポイントになる。
(2)現行制度におけるケアマネジメントの課題とその対応
現行制度におけるケアマネジメントの課題としては、平成15年度に全国介護支援専門員連絡協議会が実施した「介護支援専門員の業務実態と意識に関する調査研究報告書」及び同団体が社会保障審議会介護保険部会に提出した「7つの提言」に集約されている。その中から主な課題を抜粋すると次のとおりである。
1.利用者の個別ニーズに対応するマネジメントの実践が困難
平成15年度に実施した介護支援専門員の実態及び意識調査によれば、93%の介護支援専門員は、利用者宅への訪問を重視しているにもかかわらず、現実的には多くの担当者を抱え、形式的な利用者への訪問や事務処理に時間を費やし、利用者の生活を支え、自立支援につながる本来のケアマネジメントの実践が困難である実態が見られた。
こうした課題を解決し、ケアマネジメントの質を向上させるためには、利用者宅に訪問して、面接相談やアセスメントを十分に行ったうえで、ケアプランの作成、事業者との調整、モニタリングが必要である。
そのためには、それぞれの居宅介護支援事業所において、利用者に対するアセスメントを重視して、個別ニーズに対応した質の高いケアプランが策定できるような担当利用者数を設定し、その情報を開示することが必要である。
2.ケアマネジメントプロセスと介護報酬との乖離
平成15年度に実施した介護支援専門員の実態及び意識調査によれば、多くの介護支援専門員は、利用者の自立支援のために必要なケアマネジメントプロセスが介護報酬に結びつかず、ケアマネジメントプロセスと介護報酬との乖離が生まれていることと業務の範囲が明確でないことに、不安と不満が多い。
こうした課題を解決するためには、長期的・継続的な利用者との関わりを重視し、その自立に資するケアマネジメントが展開できるようにしなければならない。初回時のマネジメントや入・退院(所)時のカンファレンスなど、サービスの継続性を支えるケアマネジメントプロセスを充実させることが質の向上につながる。
そのためには、ケアマネジメントプロセスを評価し、その対価としての介護報酬を設定するとともに、業務の専門性や困難性を評価した加算を創設する必要がある。
3.事務処理の煩雑
介護支援専門員は、利用者との関わりを大切にし、ケアマネジメント業務に多くの時間と労力をかけるべきであるが、現状では、給付管理などの事務処理に多くの時間と労力が割かれている。
また、事業者間における情報の共有化を図るために、多くの種類の書類作成や記録が求められ、膨大な紙の無駄使い、煩雑な事務処理に辟易している現状がある。
こうした課題を解決するためには、ケアマネジメントプロセスに必要な帳票類の標準化を図るなど、煩雑な事務処理を簡素化するとともに効率化を図ることが必要である。
4.公平・中立なケアマネジメントが困難
ケアマネジメントは、利用者の自立した生活を支えるための援助であり、利用者のためのケアプランであり、利用者のためのサービス提供であるはずであるが、現状は、事業所の経営方針により同一法人事業所のサービスをケアプランに組み込むことが多い等、公平・中立なケアマネジメントの実践が難しい場合や利用者によるサービス選択も出来にくい状況がある。
こうした課題を解決するためには、利用者本位のケアマネジメントを実践する必要があり、そのためには、居宅介護支援事業所が経済的自立のできる介護報酬の設定、社会的責任のある管理者及び介護支援専門員への教育の徹底やマニュアル作成、そして、社会的自立のための条件整備が必要である。
5.研修体系の構築が必要
介護支援専門員の質の向上はきわめて重要な課題であり、現行の「実務研修」、「現任研修」について、その成果を検証し、カリキュラムや実施方法等の見直しが必要である。さらに、「実務研修」や「現任研修」では対応できない研修課題についても把握し、全体として研修成果を挙げることのできる研修体系を構築する必要がある。
(3)今後の課題
介護保険の見直しの中で、注目すべき点はケアマネジメントの体系的見直しである。介護保険部会がまとめた意見書では、次の点を指摘している。
- 要介護者に対する「介護給付のマネジメント」については、包括的・継続的なマネジメントを強化することが重要である。このような観点から報酬についても、在宅と施設、医療と介護の連携を評価する方向で見直しを行う必要がある。また、介護支援専門員1人当たりの標準担当件数など基準の見直しを行うとともに、独立性を高める方向での報酬の見直しが求められる。
- 市町村を主体とした「介護予防のマネジメント」の確立が必要であり、「新・予防給付」のマネジメントについても、この一貫として位置づけることが必要である。
- 介護給付、新・予防給付、介護以外の生活支援サービス、高齢者に対する情報提供、地域のマネジメント機関の支援といった地域における総合的なマネジメントを実施・調整する機関として、「地域包括支援センター(仮称)」の創設が求められる。
さらに、責任と権限の明確化の観点から、介護保険制度における事業所の指定と介護支援専門員の指定を独立して行い、それぞれの責任を明確化する「二重指定制度」を導入することや、不正行為に対する罰則を強化するなどの見直しを行う必要があることを指摘している。
こうしたことを踏まえ、ケアマネジメントに関する今後の課題をみると、介護給付のマネジメントと介護予防のマネジメントの連続性を、現場レベルでいかに確保するかが課題となるであろう。
ケアマネジメントは、介護支援専門員が利用者に寄り添い、利用者が望む生活を実現するために生活支援の一環として存在するものである。したがって、介護給付と介護予防とで切り離されるべきではない。また、介護予防に重点を置くことは望ましいことであるが、介護予防を筋力トレーニングと結びつけて捉えている昨今の風潮は、いかがなものであろうか。
介護予防には、きちんとしたアセスメントが必要であり、要支援や要介護1の方々に対して、一律に筋力トレーニングを行うことは、ナンセンスである。介護予防給付も介護給付も個別性の高いものであり、個人の生活の場面では連続性を持っているのであるから、こうした情報の連携を適切に行うことが重要である。
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