インタビュー

地域包括支援センターの現状と課題

2.サービスの回数が減り、戸惑う利用者への説明に苦慮する職員

要支援と認定された人の介護予防ケアプランの作成は、地域包括支援センターの業務のひとつだ。

「創和会地域包括支援センター」では、指定居宅介護支援事業者への委託を含め、65件の予防プランを担っている(平成18年10月現在)。指定居宅介護支援事業者への委託は65件のうちの3割強だという。

要支援者の介護予防ケアプランは基本単位が400単位とされ、要介護者のケアプランに比べて低く設定されている。制度改正以後、利益の面から要支援者の予防プラン作成については断る事業者もあり、そうした予防プランは担当件数の制限がない包括センターで担うことになる。このため地域包括支援センターの職員は予防プランの作成に追われ、ほかの業務への対応が十分に行えず、予防プランの作成自体も流れ作業化してしまう恐れもある。

庄司さん
社会福祉士 庄司圭介さん

「創和会地域包括支援センター」に勤務する社会福祉士の庄司圭介さんはこう話す。

「介護保険を新規申請した人の場合、要支援と要介護のいずれになるかがわからず、“まったなし調整”を求められることもあります。要支援の利用者と要介護の利用者の窓口が明確に二分化し、一本化されていないことで、利用者だけでなく、地域包括支援センターの職員や居宅介護支援事業所のケアマネジャーも混乱していることは否めません」

利用者の立場からすると、要支援、要介護と認定が変わっても、切れ目のない継続的な支援を受けられることが望ましい。

とりわけ、利用者や家族にとって、「人が変わることの負担」は大きい。しかし、このたびの改正によって、要介護から要支援へと認定された利用者のなかには、これまで信頼してきたケアマネジャーを変えざるをえなくなった人もいる。

前出の川尻さんは、「これまで要介護1と認定され居宅介護支援、訪問介護、通所介護、福祉用具のレンタルと4つのサービスを利用していた人が、要支援へ移行して同じサービスを利用しようとすると、新たに4つのサービスに関する契約書を書かなければなりません。それだけでも利用者に負担をかけることになります」と話す。

さらに、制度改正以後、介護予防訪問介護と介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーションは1月単位の定額制となり、その人に必要であると思われる利用回数を減らさないとならなくなったケースも多いという。

「利用者になぜと聞かれても制度上のことだからと繰り返すしかありません。介護サービス以外の社会的資源、いわば受け皿も整っていない状況のなかで、適切な機関に繋ぐことができない現状もあります」

こう述べる庄司さんは、上記のような背景から、高齢者が外出の機会が減る可能性もあるのではないかと危惧する。

また、介護予防ケアプランの場合、一定期間ごとに目標達成度を評価し、必要に応じてプランを見直すことになっているが、利用者のなかには現状のサービスが継続できなくなるのではないかという不安を常に抱いている人もいると聞く。

改正以後、困惑する利用者、利用者を支える介護支援専門員の声は、筆者も取材を通して目にしてきた。

川尻さん
施設長 川尻勝臣さん

要介護から要支援となったある男性は、常時ではないものの、疾病により、時折下肢に痛みやしびれが生じる。これまで介護サービスの福祉用具レンタルにより介護ベッドを借りることができたため、足に負担をかけないようベッド柵つかまってなんとか起き上がることができていた。しかし、軽度者の福祉用具レンタルに制限がかかったことで介護ベッドを返却せざるをえなくなった。経済的にゆとりのある利用者であれば躊躇なく介護ベッドを購入することができるが、そうでない場合は月に数千円の自費レンタルでさえ負担になるという窮状も目にした。

ちなみに、介護予防支援の利用者の訪問は3カ月に1回とされているが、「創和会地域包括支援センター」の庄司さんは利用者の不満を少しでも解消するため、利用者宅に月に1度は訪問するように努めているという。

一方、川尻さんは、「要支援者のなかには、例えば口腔ケアにしても、歯科衛生士による手技指導であったり、歯科医師による講演など質的にもレベルの高いサービスを望んでいる人も多い。制度上のサービス以外でも、このような人たちが満足できる受け皿を確立させることも必要ではないか」と話す。

口腔ケアについては、近年、その重要性に対する認識が医療、介護の現場に浸透してきた感がある。制度上においては、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーションの選択的プログラムである口腔機能向上加算、あるいは介護予防居宅療養管理指導を利用することもできる。

しかし、口腔機能向上に限らず、介護予防を継続していこうとする場合、本人のかかりつけ医やかかりつけの歯科医師をはじめ、家族、地域のボランティアなど、制度の枠外で利用者に関わる人も「予防」の意識をもつことが求められるように感じる。

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